そして父になるの原作はねじれた絆?あらすじと結末の違いや類似点をネタバレ比較
映画「万引き家族」でカンヌ映画祭にて最優秀賞であるパルムドールを日本人で21年ぶりに受賞した是枝監督。
その是枝監督の有名な作品は多数あり、福山雅治さん主演の「そして父になる」は2013年カンヌ映画祭にて審査員賞を受賞しています。
新生児取り違え事件を題材にしたこの映画、原作があることをご存知でしたか?
今回はその原作と映画「そして父になる」のあらすじについてまとめました。
「そして父になる」と「ねじれた絆」の関係
映画「そして父になる」のクレジットに参考文献として「ねじれた絆」が記されています。
「ねじれた絆」は1971年に沖縄県で実際に起きた新生児取り違え事件の発覚から成人するまでの17年間を丁寧に取材したものです。
「そして父になる」との共通点は
- 小学校入学時の血液検査で実の親子ではないことが判明した
- 病院側の取り違えだったが病院側の態度が他人ごとのようだった
- 病院を相手取って裁判を起こし勝利する
- ゆくゆくは実子を引き取ることを前提に週末交換・家族交流が始まる
などがありますが、実際は女の子であったことや、原作「ねじれた絆」では取り違えが発覚、交換を決定しそのための慣らしをするという部分よりも、実際交換して子供たちが成人するまでの環境の変化や苦悩のほうが多く描かれています。
映画「そして父になる」はエリートで家庭を顧みていなかった父親が「自分が育ててきた子供が実は血がつながっていなかった」という事実を突きつけられて初めて子供との関係に悩み、父性を獲得していくという観点から描かれています。
しかし原作「ねじれた絆」はやはり取り違えられた子供を中心に追っていますから、原作と思って読むと違和感があるかもしれませんね。
「そして父になる」と「ねじれた絆」のあらすじ
そして父になる
エリートで妻と6歳になる息子と都内の高級マンションに暮らす野々宮良多・みどり夫妻は、出産した妻の地元の病院から子供を取り違えたとの連絡を受けます。
取り違えた相手家族は群馬で小さな電気店を営み、大家族でにぎやかに暮らす斎木雄大・ゆかり夫妻と子供たちでした。
病院からの交換するかそのまま育てるかの結論は急いだほうが良いと提案を受け、両家は交流を始め、実子に血のつながりを感じ、どうすればよいのか苦悩します。
主人公である野々宮良多は育ての子である慶多の自身に対する愛情に気付きながら、父性を獲得していく物語です。
ねじれた絆
沖縄県で実際に起きた新生児取り違え事件のその後を追ったものです。
小学校入学前の血液検査にて血の繋がりがなく、出産した病院で取り違えられ事が分かった二人の少女。
病院の慇懃無礼な態度に怒りを覚えながらも、交換することを決めて慣らしを始めます。
しかし子供たちの苦悩は計り知れず、体調不良、甘えや不安定の増大、感情不安定などに戸惑い、親自身も苦悩します。
取り違えられた家庭はかたや気持ちの安定した母親が愛情を注ぐ家庭、かたや育児放棄・夜遊び・不倫の家庭であったことや、2つの家庭が同じ敷地に住むようになることから、二人の少女は安定した愛情を注いでくれる家庭になじむようになります。
そして結果として二人の少女は安定した愛情を注いでくれた家庭の子供となるのです。取り違えから16年後のことでした。
【ネタバレ有】「そして父になる」と「ねじれた絆」の結末を比較
映画「そして父になる」では、血の繋がった家庭で暮らす育ての子に主人公が会いに行き、「出来損ないだけどパパだったんだよ!」と伝え、その家に向かう、というところで終わっており明確な結末は描かれていません。
いっぽう「ねじれた絆」では二人の少女は翻弄され苦しみながらも成人し、一人は沖縄を出て本土にて暮らしているそうです。
「そして父になる」では子供がまだ6歳ですから、自分の育った家に帰りたいと思っても難しいですよね。(琉晴くんは家出しましたが)
しかし「ねじれた絆」では、両家が育ての子、実子それぞれに愛着を持ち、また子供たちの悲しそうな顔、嬉しそうな顔に心が締め付けられて両家の交流を長いこと続けてしまいます。
「続けてしまいます」という言い方が適切かどうかはわかりませんが、この結果、「ねじれた絆」の子供たちは二つの家庭のうちどちらに自分は居たいのかということを知らない間に問われ、時間をかけて決めていったように感じます。
新生児取り違え事件が発端でありながら、自分の子供にどう接するのかを問われ子供の側から結論が出された「ねじれた絆」は親子の絆という一言では片付けられない現実だと感じました。
まとめ
映画「そして父になる」とその原作と言われる「ねじれた絆」の違いについてお伝えしました。
血の繋がり、育ててきた情、どちらを取るのかという親の選択のように思いますが、子供にもしっかり意志があって長い年月をかけて子供はしっかり親を見ていて選ぶのだなということを感じました。
「ねじれた絆」では、複雑で場当たり的対応をしてきた家庭で育った少女は比較的早く安定した愛情を注いでくれる実の両親になじみ、「ここが自分の家だ」と思えたそうです。
逆に、安定した愛情を注いでくれる家庭で育った少女は、複雑で場当たり的対応をする実の両親に2年経ってもなかなかなじめず最終的には育ての家に帰ってしまいます。
「そして父になる」では子供たちはどうしたでしょうか?興味深い所ではありますね。
親と子の関係について考えさせられる2作品です。